夏は嫌いだ。
とにかく蒸し暑いし、屋内外の寒暖差で体調を崩す。そんな大嫌いな季節が今年もやってくる。
しかし、そんな夏にこそ聴きたくなる大好きな曲と言えば椎名林檎の長く短い祭だ。
PVも何度見たんだろう。初めて見た時の衝撃は未だに忘れられない。
世の中には恋愛をポジティブに捉えたものと、ネガティブに捉えたものがある。
私自身恋愛は疎いので実際はよく分からないが、ネガティブであることのほうが描写が芸術的で美しいのかなと思う。
長く短い祭のPVはその集大成で、邦画のドロッとした感じを短時間に詰め込んだ短編映画みたいだなぁと感じだ。
女の一途さと狂気が皮肉にも美しく映るんですよ。服と靴を脱ぎ捨てて、パトカーの光の中で踊り狂うなんて最高じゃないですか。
愛はネガティブな存在であってほしい。せめてフィクションの中では苦しいものであってほしい。
桜庭一樹の私の男も何度読んだだろうか。
悲恋というか狂気というか、話自体はクソ野郎共のクソみたいな話なのだが、構成と何より作者の使う言葉の使い回しと雰囲気が美しい。
花の結婚から遡って行くという時系列逆行の物語配置も良い。
淳悟を現す落ちぶれた貴族のような美しい男って言い回しもなんだかお洒落だなぁと思う。
とにかく全てが好き。
全てが好き。
大人になるにつれて、好きな物を好きという機会も、嫌いなものを嫌いと言う機会も減った。
ただ流れる季節の中で、笑ってやり過ごして、何かに真剣に向き合うことを10代のそれと割り切って恐れた。
棘は抜いた、角もとった。大人になることは、何かを諦めることに似ている。