マテリアル

私と本とその他色々

割と占いは信じるほう

 

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五月も下旬、精神の回復と共に再開したinstagramで素敵なブラウスを発見した。

花や草の大柄模様が好きな私にとってはもう奇跡のような出会い。

しかも二年ほど前に行った「パーソナルカラー診断で当たり色って言われたグリーン」

某百貨店さんのinstagram、それはかなり相当な覚悟はしていた。それでも検索してお値段を見てびっくり。これは生活が出来ない。でも、絶対に素敵だから袖を通してみたい。

ああ、袖を通すだけ、袖を通そう。

意志の強いのだか弱いのだか分からない私は私用で原宿まで出かけたそのピンヒールで新宿まで向かった。

原宿から代々木新宿の景色は変わっていないようで変わっている部分があった。代々木公園の緑は変わらないまま、道路端のカフェやブティックが潰れていたり。街中にチープな看板のPCR検査施設が立っていたり。

元々ご機嫌にピンヒールで散歩をするような性格でもないので、このあたりを散歩したことが2度か3度しかないのだけれど、なんとなく街を取り巻く雰囲気が変わったのかなという事だけは理解した。

でも、目的のしっかりしている私の足はただひたすらに真っすぐに百貨店を目指した。

久々の百貨店は胸が躍った、一階には好きなブランドの気になっていたピアス。でも見たら多分欲しくなるから綺麗に素通りをして、二階のお目当ての品へ。そして試着。

ああもうダメこれ可愛い…。

でもこれを買ったら破産してしまう、でもメルカリの売掛金が3万円ある。あと1万円以上売れたら買っていいかな?どうしよう、とりあえず頭冷やしたいです。

意志の弱い私は弱弱しく呟く。

「お取り置きってできますか?」

 

その後、私は毎日頭の半分をそのブラウスにキャパシティーを持っていかれながら生活を行うこととなる。

そんな私に、「会社で配られる生命保険屋さんの定期的な占い」がやってくる。

なんとなく元気が出るのでいつも参考がてらに読むのだが、今回は爆弾のような回であった。

『身に着けるものや食べるものにお金をかけましょう。きっといい仕事が舞い込むでしょう』

私はその場ですぐに頭を抱えて叫ぶ、

「今ね、私百貨店でお取り置きしてるんです、とんでもなく高いブラウス。生活不相応の。買えって事なの?エスパー?」

そして帰りの電車で購入しますとの連絡を入れ、帰って大量にメルカリに服を出品した。

 

何とか病院受診の日までお取り置きを延長していただき(ありがとうございました)、6月初旬なんと凡そのお金を断捨離することで作り現金で購入した。

そして、そのブラウスにはショートカットが似合うと閃いてリモートワークを17時に切り上げて即切りにいった。切った後は本当に爽快だった。「髪の毛に悪い気が停滞すると聞いた」こともある。あながち間違っていないんじゃないかといつも思う。

そんなこんなで苦労したり悩んだり思い入れのある一着なので本当に家に帰った瞬間にファッションショーが始まった。ここ最近で一番幸せだと思った。

何か美味しいものを食べたり、何か綺麗なものを見るのも幸せだけれど、やっぱり私の幸せはここにある。美しい服が好き。

 

さて、一連のエピソードからお判りいただけるだろうか。私は割と占いを信じるタイプの人間だったりする。

なので「パーソナルカラー診断で当たり色と言われたグリーン」は大好きだし、「占いに背中を押されて購入する」ハッピー野郎である。

 

だからこそ、ここぞという時はいつも神社にお参りに行く。

そして、悩みごとを上手く人に話せるタイプでもないのでそういう時も神社にお参りに行く。(だから昔っからブログ書いてんだけど)

19時過ぎ、仕事終わりの私は近所の小さな小さな龍神様に来ていた。お参りと言うのは自分の住むところの近くに神社に小まめに通ってお話しを聞いてもらうことが一番いいらしい。

私の住むところは昔塩産業が有名だったらしく龍神様が多くまつられている。祠や神社がそこら中にあるので、私はよく5円玉をもってお参りに行くのだが、龍神様には塩を備えるのが正しいらしく、また、小さな祠や神社なので賽銭箱などなく、石碑の上にぽつんと置いて、そっと手を合わせて願うばかりであった。

私の五円玉だけがぽつんと置いてあるのでいつも申し訳ない気分になる。

 

薄暗い神社の鳥居をくぐり、先日手に入れた一番お気に入りのブラウスを着ていつものように五円玉を石碑に置こうとしたら先客がいた。

どうやら、私のほかに縋るような気持ちで来ている人がいるのかもしれない。そりゃそうだ。こんな世の中なんだから。

私は誰かの願いの隣にそっと五円玉を並べ、二度礼をし、パンッパンッと大きく拍手をし手を合わせた。

 

明日、両親の1度目のワクチン接種である。

正直なところとっても心配なのでこうやって神社に来ていた。思い返せば母の倒れた年から私は初詣に行っても願うことはいつも決まっている。

「自分を含む身の回りの人か健康で笑って過ごせて誰一人欠けませんように」

その願いは幸い、現在までずっと叶えられている。案外人間は大きなことを望むより小さな平穏を願ったほうがいいものなのかもしれない。

 

今日も似たようなものだった。とにかく私は会いたいと願っていた。

合わせた手のひらに雫が落ちているのを見て自分が泣いていることに気が付いた。もしかしたら前人の五円玉もこんな感じだったんだろうか。だったら龍神様もびっくりだよね。

暫く手を合わせた後、手の甲で涙をぬぐって頭を下げて神社を後にした。

柄にもなく泣いたなぁと思いながら歩いていたら涙が止まらなくなった。いつもと違う住宅街の中、斜め上を向いて歩いた。

 

とりあえず、帰って晩御飯を食べながら私は元気ですと伝えたいと思った。

迷ったけど、髪を切ったこととこの間電話で話していた一目ぼれのブラウスを買ったよ。ってことを伝えたくて自分で自分で撮ったいわゆる自撮りを恥ずかしながら送ってみた。

 

「可愛くなったねぇ。髪の毛短いほうがいいよ。ブラウスも緑って聞いてて派手かなって思ったけど上品でいいね。似合ってるよ」

 

送ってよかったなと心から思った。

何もかもうまくいきますように、明日もその時間にお参りに行こう。